2020/04/12
by 吉見 隆洋 / 藤野 一紀
電車やバス・タクシーの利用、コンビニやスーパーでの買い物では、キャッシュレスでの支払いがあたりまえになりました。私たちの暮らしにすっかり定着した「おサイフケータイ」「モバイルSuica」などの電子マネーは、ソニーが開発した非接触型ICカード技術方式「FeliCa」によって実現されています。これらを支えるFeliCa ICチップの出荷は、2019年9月末時点で実に13億個以上に達しているそうです。
今回は、このFeliCaとスマートフォンが融合した「モバイルFeliCa」によるサービスを縁の下で支える「IC-Chip Access Server for FeliCa(ICAS=アイキャス)」をご紹介します。
DXCテクノロジー・ジャパン(当時は日本ヒューレット・パッカード)が開発した「ICAS」は、「フェリカネットワークス サーバー仕様」に準拠した唯一の製品として、モバイルFeliCaサービス基盤の中で重要な役割を担っています。レーシングマシンに例えるなら、圧倒的な性能と信頼性を誇るエンジン。“ICASエンジン”は、ボディやシャーシなど他の技術要素とともに「マシン=モバイルFeliCaサービス基盤」を構成しています。
電子マネー、電子チケットサービス、ポイントサービス、高度な認証機能を利用した社員証・会員証・電子鍵など――スマートフォンから利用できるモバイルFeliCaのサービスは、目覚しい広がりを見せています。ICASは、モバイルFeliCaアプリケーションの開発・サービス提供を劇的に容易にしました。それが、サービス事業者さまや導入企業さまから広く支持されている理由です。2017年にアップルが発売したiPhone8/iPhoneXからは、世界標準モデルにFeliCaが搭載されています。モバイルFeliCaは、ついに日本から世界へ羽ばたきました。もはやガラパゴスなどと揶揄されることはありません。
DXCテクノロジー・ジャパンが開発した日本発の「ICAS」
スマートフォンに内蔵されたFeliCa ICチップをサーバーからアクティベート(利用可能に)すること、そのFeliCa ICチップへネットワーク越しにアクセス(読み書き)することがICASの基本機能です。ICASが提供するAPIを介して、FeliCaの強力な暗号技術を使用し、インターネット経由でスマートフォンとの安全な通信を行います。また、利用例として高価な専用リーダー/ライターが担ってきた機能をサーバーサイドに集約し、端末側のコストを大幅に削減できるのもICASの大きなメリットです。
2004年、モバイルFeliCaサービスを提供するために、ソニー、NTTドコモ、JR東日本がフェリカネットワークス株式会社を設立しました。ICAS初バージョンが登場したのは2005年です。それから10余年、NIST(米国立標準技術研究所)標準に準拠したセキュリティ機能の実装、オープンテクノロジーの積極的な導入など、ICASは時代の要求に応えながら着実に進化してきました。現在取り組んでいるテーマは、パブリッククラウド上でより安価にICASをご利用いただくためのリニューアルです。小規模のお客さまでも、もっと手軽にモバイルFeliCaをご活用いただけるよう改良を続けていきます。
スマートシティでひろがるモバイルFeliCaの利用シーン
いま、全国の自治体でスマートシティの実証実験が進められています。そこでは、「地域通貨」や「MaaS(Mobility as a Service)」といったキーワードが、サービス実現を視野に入れた取り組みとして語られています。実は、ここにモバイルFeliCaの新しいビジネスチャンスが広がっているのです。
「”かざすだけ”で電子マネーを使えるIDカード」となることが、モバイルFeliCaのユニークな点です。“ご当地コイン”感覚で利用できる地域通貨が、地域経済の活性化に貢献できるとしたら。買い物やMaaSの利用を含め、スマートシティで提供される様々なサービスをモバイルFeliCaひとつで決済・利用できるとしたら・・・どうでしょう。期待が大きく膨らみませんか?
DXCテクノロジー・ジャパンでは、海外からお客さまやパートナーさまを日本にお招きする機会が少なからずあります。私は、そうしたときに(商売抜きで)「FeliCaカードを1枚持っておけば、とっても便利ですよ」と申し上げています。その意味はきっとご想像いただけますね?それほどまでにFeliCaは、私たちの暮らしを支える社会インフラサービスとしてしっかりと根付いているのです。
「身近なところにDXC」の第3回、いかがでしたでしょうか。次回も業界視点から、DXCテクノロジーの取り組みにご紹介したいと思っています。どうぞお楽しみに!